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「異邦人たちのパリ展」と「モネ大回顧展」 [アート]

前回の記事にも書いたとおり、4月15日に国立新美術館に行ってきましたが、その時に
2つの企画展、「異邦人たちのパリ 1900-2005 ポンピドー・センター所蔵作品展」と
「モネ大回顧展」を見てきました。
今回はその2つの企画展について書きたいと思います。

まず、「異邦人たちのパリ 1900-2005 ポンピドー・センター所蔵作品展」です。

ポンピドー・センターとは、フランスのパリにある総合文化施設で1977年に開館しました。
ここには国立近代美術館、産業創造センター、音響音楽研究所、公共図書館等が入っている
文化施設の集合体です。
ルーブル美術館と並びフランスで最も人気のある文化機関だそうです。

日本では、1997年にも東京都現代美術館で、ポンピドー・コレクション展が開催されて
いますが、今回はパリで修行した20世紀初頭から現在までの外国人芸術家達の作品が
テーマになっていて、約200点を展示しています。

芸術の都パリは、世界中の芸術家たちを魅了してきました。
ピカソ、シャガール、モディリアーニ、そして日本の藤田嗣治などがパリでその才能を磨き、
開花させました。

私が今回のこの「異邦人たちのパリ展」の中で興味があったのは、シャガールと
藤田嗣治です。特に藤田嗣治の作品はずっと前から好きでした。

藤田嗣治(1886年〜1968年)はフランスにおいてもっとも有名な日本人画家であり、
明治以降の日本人芸術家で、これほど成功を海外で収めた人は他にいないそうです。
彼の絵は、ネコと女性を得意な画題とし、日本画の技法を油彩画に取り入れつつ、
独自の「乳白色の肌」と呼ばれた女性の肌を描くのが特徴でした。

7年ぐらい前に私は秋田県の旅をして、その時、秋田県の平野政吉美術館に行ったのですが、
そこで藤田嗣治の描いた、美術館の壁一面分もある、超巨大なキャンパスに描かれている
「秋田の行事」を見た時に強烈な印象を受け、この人はただ者ではないと思っていました。

今回展示されている藤田嗣治の絵の中で、私が最も印象的だったのは
「カフェにて(1949年)」です。
藤田嗣治らしく、女性の肌が透き通るような乳白色でとてもきれいに描かれています。

あともう一つ、今回の展覧会のチラシやポスターにも使用されている藤田嗣治の自画像
「画家の肖像」(1928年)もとても印象的で、戦前の日本男性とはとても思えない
オシャレな雰囲気(トレードマークのおかっぱ頭にピアスを付けている)があり、
そしてとても不思議なオーラがある肖像画です。
ネコを描くのを得意としていただけに抱きかかえているネコの毛の質感や、かわいらしさも
よく表現されています。

他の画家ではシャガール(1887〜1985)の「エッフェル塔の新郎新婦(1938-1939年)」
が印象に残っています。この絵は、シャガール自身と妻が描かれています。
第二次世界大戦勃発の年に描かれたこの作品は、時代に翻弄されながらも変わることは
決してない夫婦愛をテーマに、明るい色遣いで描かれています。
しかし、どことなくこれから何が起こるのだろうという不安感が漂っている風にも
私には感じました。


左から藤田嗣治「カフェにて」、マルク・シャガール「エッフェル塔の新郎新婦」、
パブロ・ピカソ「輪を持つ少女」




次に「モネ大回顧展」を観覧しました。
モネは、ルノアールやセザンヌらと並び、日本人に最も愛されている人気の高い
印象派の巨匠です。

今回のモネ展は、フランスのオルセー美術館やアメリカのボストン美術館等、世界各国の
美術館から作品を約100点も集めた、かつてない規模の展覧会です。

私はこのモネ展で、美術の観覧では初めて音声ガイドナビゲーターを利用しました。
ちなみに声の出演は、女優で歌手の 小泉今日子さんでした。

モネは「光の画家」という異名を持っていて、時間や季節とともに移りゆく光と色彩の
変化を、生涯にわたり追求した画家です。

会場内は<近代生活><印象><構図><連作><睡蓮/庭園>の5つのテーマに分けて
作品が展示されています。

最初のテーマ<近代生活>の最初の方にあった作品「日傘の女性(1886)」は
モネが「光の画家」と呼ばれている意味がよくわかる作品で、とても明るい日差しの中で、
日傘を差している女性を描いた美しい絵です。ちなみにこの女性はモネの妻、カミーユです。

2つ目のテーマ<印象>にあった「ジヴェルニーのモネの庭、アイリス(1900)」
という作品も花壇と光をモチーフにしたとても美しい作品です。
この作品だけに限りませんが、暗い影の部分や土などは黒色を極力使わずに点描という
細かいタッチで色を配置し、見た人がその色を視覚のなかで混合する方法を使っています。


左側縦位置の絵は「日傘の女性」、右側は上から順に「ポール=ドモワの洞窟」、「積みわら」、
「ジヴェルニーのモネの庭、アイリス」、「アルジャントゥイユのセーヌ川」、
「サン=ラザール駅」

あと、モネといえば「睡蓮」の連作が有名で、この展覧会でも数点ありましたが、
睡蓮の絵の前で深呼吸すると、なぜか心地良い透き通った空気を感じます。
マイナスイオンが絵から出ているのではないかと、錯覚を起こすぐらい綺麗な、
光に満ちたすばらしい絵でした。

そういえば昔、油絵を習っていた時、先生が「空気を描いてください。」と良く言って
いましたが、その時は何のことだか全然わかりませんでした。
空気って無色透明じゃないかなと...。

でもモネの作品や、「異邦人たちのパリ展」のシャガール、ピカソ、藤田嗣治の作品を
見ると空気の意味がわかってきます。

ゴールデンウィークを利用して新しく出来た国立新美術館と、2つの企画展を見に
行かれるのもいいかもしれませんよ...。きっと新しい発見があると思います。

「異邦人たちのパリ 1900-2005 ポンピドー・センター所蔵作品展」
会  場:国立新美術館・2階企画展示室(東京・六本木)
会  期:5月7日(月)まで開催しておりますので、行かれたい方はお早めに。
開館時間:10時から18時まで(入場は閉館の30分前まで。)
休  館:毎週火曜日。ただし、5月1日は開館。

※金曜日および、ゴールデンウイーク期間中の5月3日(木)〜5日(土)の3日間は
 午後8時までの夜間開館も実施するそうです。(入場は閉館の30分前まで。)

「モネ大回顧展」
会  場:国立新美術館・1階企画展示室(東京・六本木)
会  期:7月2日(月)まで。
開館時間:10時から18時まで(入場は閉館の30分前まで。)
休  館:毎週火曜日。ただし、5月1日は開館。

※金曜日および、ゴールデンウイーク期間中の5月3日(木)〜5日(土)の3日間は
 午後8時までの夜間開館も実施するそうです。(入場は閉館の30分前まで。)


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コメント 19

京男

おはようございます。
モネの輝くような感じは好き。
空気を描いてくださいというのは、若い時はわからなかったでしょうね。こういう絵をみると確かに空気が描けている。
連休は混むでしょうね。こういうのは一人静かに観賞したい。
by 京男 (2007-04-28 05:36) 

平日の午後とかのすいた時間に、ゆっくりと見てみたいですね。
by (2007-04-28 08:19) 

moco-moco

いいですよね~、美術館。
ここはまだ行ったこと無いので、すごく行きたいです。
ミッドタウンの中にもサントリー美術館でしたっけ?出来てるんですよね?
六本木も変わりつつありますね~
by moco-moco (2007-04-28 13:33) 

jirorin

GWに東京見物って手もあるな…(田舎ものなので)
と、今思ってしまいました。
今年は予定がほぼ真っ白なんです(泣)。
どっか行かないと、なんか損した気分…
by jirorin (2007-04-28 20:44) 

masugi

国立新美術館、まだまだ混んでそうでちょっと気後れして
いるのですが、観に行きたいです~☆
by masugi (2007-04-29 12:17) 

RangerMaeda

「モネ大回顧展」派僕も見に行きたいなぁー^^
by RangerMaeda (2007-04-29 21:05) 

電車の広告で見て、モネは見に行きたいなぁと思いました。
でも、混んでそうで、、、
by (2007-05-01 17:21) 

朝のソナタ

>京男さん
モネは光を効果的にうまく使っていますよね。
それとたぶん、空気を描くのが印象派の極意なんでしょうね。
連休はたしかに相当混むでしょうね〜。
お越し頂きありがとうございます。
by 朝のソナタ (2007-05-01 23:00) 

朝のソナタ

>binpakuさん
そうですよね〜。平日にゆっくり見に行ければ理想的なんですけどね〜。
なかなかそれが難しいところです...。でも展覧会は本当に良かったですよ。
モネ大回顧展の方は7月2日までやってますので、空いてきたら是非どうぞ。
お越し頂きありがとうございます。
by 朝のソナタ (2007-05-01 23:04) 

朝のソナタ

>mocoさん
ぜひぜひ、行って見てください。
東京ミッドタウンもすごいきれいで広いですよ〜。
ミッドタウンは敷地面積の4割が緑や公園ですから、晴れた日とかは
とても気持ちいいと思います。美術館で絵を見てミッドタウンの公園で
テイクアウトしたお弁当を食べるなんてのも、いいかもしれませんよ。
お越し頂きありがとうございます。
by 朝のソナタ (2007-05-01 23:08) 

朝のソナタ

>jirorinさん
おぉ〜東京見物!いいね!
東京にはいつも仕事で来ていらっしゃるんですもんね。
たまにはプライベートでどうです?
国立新美術館だけではなく、その近くに東京ミッドタウンも出来ましたし、
東京駅の近くに新丸ビルも出来ましたしね。思い切ってどうですか〜!
お越し頂きありがとうございます。
by 朝のソナタ (2007-05-01 23:08) 

朝のソナタ

>masugiさん
ゴールデンウィークの今が一番混んでいるでしょうね〜。
でもゴールデンウィークが過ぎればいくらか空くかな?!たぶん...ね。
でも展覧会はホントに良かったですよ〜。
お越し頂きありがとうございます。
by 朝のソナタ (2007-05-01 23:09) 

朝のソナタ

>Rangerさん
モネ大回顧展、良かったですよ〜。国立新美術館もきれいですし。
いっそこと、見に来ちゃうというのはどうでしょう!?
お越し頂きありがとうございます。
by 朝のソナタ (2007-05-01 23:10) 

朝のソナタ

>Ranranさん
混んでますよ〜ゴールデンウィークはそこそこ...。
ちなみに5月3日(木)〜5日(土)の3日間は午後8時までの夜間開館も
やってますし、それは割と空いているかもしれません...。
それにゴールデンウイークが過ぎれば、ちょっと空くかな...たぶんね?!
でもモネ大回顧展は良かったですよ〜。お薦めです。是非どうぞ!
お越し頂きありがとうございます。
by 朝のソナタ (2007-05-01 23:14) 

ラブ

パリが画家達の間で、中心であり、憧れであり、退廃であり…
みたいな時代って、あったみたいですね。当時のパリに、行って
みたいです。
by ラブ (2007-05-02 15:46) 

諄諄

絵画をゆっくりと観賞する時間がほしい、今日この頃です。
GWが過ぎたら、有給考えてみようかな。。^^
by 諄諄 (2007-05-03 02:26) 

朝のソナタ

>ラブさん
パリには画家たちを引きつける、すごい魅力があったのでしょうね。
それと色々な画家たちが集まるので交流の意味もあったのかもしれませんし。
私も当時のパリに行ってみたいものです。
まあ、ドラえもんでもいない限り、かなり無理ですが...(笑)。
お越し頂きありがとうございます。
by 朝のソナタ (2007-05-04 18:28) 

朝のソナタ

>諄諄さん
有給とってゆっくり見るのも良いかもしれませんね。
緑に囲まれた美術館と名画を見に是非行かれると良いと思います。
きっと心が癒されると思います。あと近くに東京ミッドタウンもあるしね。
お越し頂きありがとうございます。
by 朝のソナタ (2007-05-04 18:36) 

朝のソナタ

>ミカチさん
nice!ありがとうございます。
by 朝のソナタ (2007-05-04 18:37) 

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